市大商学部宮本憲一ゼミでは、ほぼ月に一度のペースで卒業生を中心に先生を囲んで研究会(背広ゼミ)を開催しています。先生が京都の西院に1996年に研究室を開設されたことがきっかけですから、スタートしてもう20年、回数もゆうに170回を超えています。毎回7~8人が集まり、文献講読と議論を行っています。講読文献は古典を中心に多岐にわたります。例えば、現在はピケティの『21世紀の資本』を読んでいますが、その前はホッブズ『リヴァイアサン』といった具合です。時には、「自由報告」として参加者や先生ご自身の報告をもとに議論することもあります。アスベスト問題や大阪都構想、普天間飛行場の移設問題など、まさに「今動いている」社会問題が素材として意見の交換が行われます。
背広ゼミは参加者にとって、文献を読むことで社会を見る羅針盤を、社会問題への議論を通じて現場感覚を得ることができる機会になっています。先生も、教育の場として続けていくことを考えてくださっています。少なくとも「200回」は目指したいところです。
宮本先生は「研究と教育」を生涯の仕事だと明言されていますが、このたび『戦後日本公害史論』で日本学士院賞を受賞され、研究面での成果が大きく評価されました。卒業生にとっても喜ばしい限りです。そこで、ゼミの機関誌『財政学散歩』をこの機会に発行することになりました。『財政学散歩』はもともと在学中のゼミ生が作り続けてきたものですが、近年では背広ゼミ生が中心になって編集しています。先生の論文をはじめとして、卒業生から寄稿を募り、みなさんの近況や論考なども掲載し、毎回100ページ近くのボリュームになります。不定期発行ではありますが、卒業生の発信の場としての役割も果たせているのではと思います。
今年は、12月をめどに先生の受賞を記念してのゼミ総会・祝賀会の開催も企画しています。先生にとっても、ゼミOBにとっても実りの多い年になりそうです。
文責 栗本裕見(文昭63卒・法院平10修了)