あなたは本学内に馬がいることはご存知だろうか。旧教養地区のグラウンド横に厩舎(きゅうしゃ)があり、そこで馬が飼われている。体験乗馬をしに厩舎へ行ったことがある方も多いのではないだろうか。
今回紹介するクラブは馬術部。今年で創部80年を迎える。小山ひとみさん(文・3年)と酒井佑輔さん(文・3年)にお話を伺った。
酒井さん(左)と小山さん(右)=ツクルマで6月11日、谷口結梨果撮影
——どんな活動をしていますか。
小山 馬は暑がりなので、基本的に朝練のみです。朝みんなで集まり、馬術の練習をします。運動が終わったら馬の体を洗ってあげて、ブラシしたら終わりです。馬休日といって、馬を休ませる日もあります。
酒井 午後に当番がなければ自由なので、朝練して授業に行って家に帰る、ということもできます。
小山 また、当番制で宿直があり、厩舎に泊まります。朝と夜にごはんをあげるのと、馬に何かあったときのためです。厩舎にはエアコンやテレビがあり、普通に人が住める環境です。
馬のごはんは草や飼料、麦などです。栄養価の高い総合栄養食もあります。昼と夕方にも交代であげています。おやつはにんじんです。獣医さんに調整してもらって、その子に合った量のごはんをあげています。
酒井 例えば麦はエネルギー源なので、太ってきたら減らしたり、元気をつけるために増やしたりしています。他にも様々な目的でごはんの量を調整しています。
馬術部の一日
午前8時 集合 作業(掃除など)、練習(授業がある人は抜ける)
午後0時 練習終了
昼休み 当番が昼飼い(お昼ご飯)
4限後 当番が夕飼い 宿直が夜飼い、朝飼い
——馬術とはどういうものですか。
酒井 馬術は大きく分けて2つあり、馬場馬術と障害馬術というものがあります。馬場馬術は、長方形の枠の中で、決められたステップ、スピード、動作で馬を動かすというものです。言うならフィギュアスケートのような感じです。いかに馬を上手に扱うか、思い通りに動かせるかなどを競います。審判が得点をつけて、その得点率で勝敗を決めます。
小山 障害馬術はドッグランにあるようなバーがあり、人が乗った状態でバーを飛ぶという競技です。「いかにバーを落とさないか」と「速さ」を競います。学生の競技は基本この2つです。普段からこれらの競技に向けて練習をしています。
馬場馬術の試合の様子=馬術部提供
障害馬術の試合の様子=馬術部提供
——馬は何頭いますか。
小山 今は8頭います。馬によって得意な動きが全く違います。馬は結構ビビりで、ちょっとした音や、見たことがない大きな物などにもびっくりするので、怖くてバーを飛べない子もいます。
酒井 しっかり調教されていて、得意なら自分から飛びに行く子もいます。馬場と障害、両方ともそれなりにできる子の方が多いです。馬場馬術だけやっている子もいます。
小山 馬の特性に合わせてコーチの指示を仰ぎながら、コーチとともに調教していきます。他大学だと馬場馬術専用、障害馬術専用および練習専用の馬がいたりします。
酒井 練習専用の馬は経済的にゆとりがある大学です(笑)。そういう馬がいるところもあります。
——エースはいますか。
小山 馬の能力、調教状態それから年齢によります。だいたい6歳から14歳の子までいますが、およそ13、14歳の子が今が真っ盛りのエースです。若い子は調教が発達段階なので、年を取っている子の方が動かしやすいです。馬の選手生命は頑張っていてもだいたい25歳までです。10代後半になると、もうそろそろ引退、となりますね。
部員ごとに担当馬がいて、私が担当している馬は2頭います。メリーとシチーという名前です。しっかり調教されていて、上手に動ける子と若い子です。
——乗っている人もトレーニングなどしますか。
小山 そうですね。人の練習と馬の練習があります。1回生の前半までは人の練習を主にします。後半からは加えて馬の練習もしていきます。ほかの運動部と違い、筋トレなどはしません。どちらかというとバランスや重心などの方が結構重視されるので、筋トレはしてもしなくてもいいよ、といった感じです。
酒井 とても激しい動きをするわけではないですが、長時間乗ると疲れます。脚立の上に鞍を乗せ、実際に馬に乗ったときの感覚を練習する、というトレーニングも存在します。
小山 馬に、乗ってる人のことを常に意識してもらうのは基本です。あと、馬との信頼関係は試合でも影響します。馬からの信頼もありますが、自分が馬を信じてるかどうかも大事です。
酒井 障害馬術だと、飛ぶ瞬間は馬に任せるしかないです。飛ぶときに人が変にビビったりすると馬にも伝わります。そうすると馬は飛ばなくなります。馬の邪魔をするなとコーチによく言われます。
小山 飛ぶ瞬間は、頑張れって思うしかありません。
——大会はどれくらいありますか。
小山 関西の大会は年に5回あります。いくつかの大学が集まって開催する大会も合わせると年に9回ほどです。
——馬は購入するのですか。
酒井 購入するときもあるし、他大学から譲ってもらう、競馬場から競争馬を引退した子をもらうなどですね。
小山 競走馬を育てている牧場から譲り受けたり購入したりする場合もあります。
酒井 何百万円する馬もあれば、数十万円で交渉できるときもあります。
——馬術部の魅力は何ですか。
酒井 馬が可愛いという点もありますが、ここでしか絶対に体験できない、というところです。乗ったり触ったりできる機会はほぼ無い上に乗馬クラブなどに行くとお金がかかります。あと、高校の同級生などに馬術部に入っている、と言ったときの反応は面白いですね。
小山 当たり前ですが馬は言葉を話しません。馬とどう付き合っていくのかいつも考えています。最初の頃はブラッシングをすごく嫌がられました。少しでもブラッシングを嫌じゃないと思ってもらうにはどうしたらいいか、例えば力加減や馬を急に触らない、といった試行錯誤を繰り返しました。相手のことを考えて行動するなど、馬と接する上で得るものは大きいです。
——嬉しかったことは何ですか。
酒井 僕の担当馬は気性が荒いです。ちょっと触るとすぐに怒りますが、撫でてあげるとすごく喜びます。馬が心を通わせてくれた瞬間がとても嬉しいです。
小山 大好きなメリーちゃんと賞をもらえたことです。賞状は連名で、馬に乗っていた人と馬の名前が隣に並びます。そんな賞状をもらえたことが嬉しかったです。
また、最初はなかなか上手に乗れませんでした。馬が動こうとしても人間が邪魔してしまったり、人間が指示を出しているのに馬が指示を理解できなかったりです。そうやって噛み合わない中で、たまにかっちり合うんです。自分が、前に出てと思ったときに馬が出てくれる瞬間がいつも嬉しいです。
厩舎の場所
厩舎=本学内で6月11日、谷口結梨果撮影
(出展元:Hijicho HP)